「第五凶」
昨夜のラジオ深夜便で詩人の高橋睦郎の「母を語る」をうつらうつら聞いていた。インタヴュアーの問いは、駆け出しのアナウンサーみたいで、イラついた。こい<つは何を聞いてんだと思いながらも、淡々と答える高橋の語り口にいつしか引き込まれていた。生まれて数ヶ月で一家心中に巻き込まれた話は圧巻だった。夢うつつながらもその衝撃は、朝になっても持続していた。
書棚から現代詩文庫の「高橋睦郎詩集」引き抜いて(いつもこの手の書籍は所有しているのだ)頁を繰る。「幼い王国から」(自伝にかえて)と題された小文にその話は載っていた。
「私には二人の姉がいた。一人は父の死んだ次の日、脳炎をおこして死に、葬儀は棺を二つ並べての沈鬱なものだったらしい。父の死後、祖母たちは、こどものいない父の妹、つまり叔母に、いま一人の姉をやるように迫った。思案に暮れた母は、何もわからない姉と私にカルモチンを服ませ、自分も多量に服毒した。幸か不幸か、母に決断を迫りに来た祖母たちに発見されて、このみじめな母子は、みじめなこの世に連れ戻された。姉はすぐ、叔母のうちにやられた。」
●蛇足ながらこの「高橋睦郎詩集」の価格は¥320だ。当時(1971年)の物価であればこのくらいか。珈琲¥100?ハイライト¥70。学生食堂のAランチ¥90。
●追加のの蛇足。この詩集に1枚の名刺とおみくじがはさんであった。名刺は、昨日久しぶりにメールをくれた年長のコロンビア在住の友人の1971年当時のもの。名刺の裏には、下宿の地図が書かれていた。窓を開けると隣の建物のモルタル壁が眼前にせまりくるという昼か夜かわからない部屋だった。因縁というべきか。
●蛇足再び おみくじは、「第五凶」というものだ。
願望 叶いがたし
病気 本ぷくしがたし
待人 来らず
失物 出でず
縁談 見合すべし
売買 利あらず
其他 控えるべし
金縛りにあったように思われた。40年前のものとはいえ、現在を暗示しているかのようにも思える。当分は、そおっと息ひそめて暮らして行こう。
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